現在京都嵯峨芸術大学で教鞭をとる1968年生まれのセラミック・アーティスト日野田崇。マンガやコミック世代の日野田にとって親しみやすいモチーフである二次元のマンガ的グラフィティを三次元で表現してきました。
その制作行為を日野田は、「大量生産されては捨てられてゆく物語のカスを拾い集める作業」と考えています。
2006年頃からはそのグラフィックが作品を飛び出し、自由自在に切り取られたカッティングシートが壁や床に増殖し、空間全体で日野田の独創的な世界を展開しています。2次元と3次元を行き来する作品を日野田は「2.5次元」作品と呼んでいます。
リズミカルで有機的な作品のフォルム、愛嬌と皮肉が混じりあうデフォルメされたストーリーのないグラフィック・・・セラミック・アーティストと名乗る日野田の作品は、陶芸、ペインティング、デザイン・・・あらゆる分野をまたぐ、カテゴリーでくくることがもはや無意味ともいえるオリジナリティあふれる作品です。
ここ2年間は海外での発表も多く、アメリカ、ベルギー、スウェーデン、中国、クウェートでのグループ展など、日本だけでなくますますその活躍の場を広げています。
本展では、約6点の新作を発表します。
また、ギャラリーの空間を生かしたインスタレーションを展開する予定です。
世界を認識できる方法は限られている。それは存在自体がどこまでも中庸で宙ぶらりんの人間の限界でもある。
虹の外側には見ることのできない光線がもっとひろがっている。極大と極小の空間はきっと見極められないどこかでつながっている。世界は聴き取ることのできない音に満ちあふれている。
そのようななにかを想像することはできる。
そういった意志と力のみが人間の可能性であり、救いではないか。
一方、現代ほどめまぐるしくアレゴリー(寓話)が垂れ流される時代もかつてなかったのではないだろうか。ハリウッド映画、家系図、経済、民族、ゴシップ、占い...。しかしそれは世界の本質を言い当てるにはおよそほど遠い。
ならばいっそのことそれらをつきまぜたところに別のリアリティが探究できないか。
この数年の試みはそういった意図に基づいている。
日野田 崇
<日野田崇 その他の展覧会>
「Breaking the Mold: Contemporary Chinese and Japanese Ceramic Sculpture」
会場:The Dennos Museum Center/ミシガン、アメリカ(Dai Ichi Galleryとのコラボレーション)
会期:2009年4月24日(金)〜9月27日(日)
「Fragiles -Porcelain, Glass & Ceramics」
会場:Al-Sabah Art & Design Collection/クウェート
会期:2009年6月13日(土)〜7月11日(土)