イムラアートギャラリーでは、11月6日(木)より、鬼頭健吾、小金沢健人、名和晃平、村瀬恭子によるグループ展「シュヴァルツ・ヴァイス」を開催いたします。
展覧会タイトル「シュヴァルツ・ヴァイス」は、ドイツ語で黒/白という意味です。本展の参加作家は皆、ドイツでの在住・滞在経験があり、今回のグループ展の通奏低音としてドイツ語のタイトルを採用しました。この展覧会タイトルにあわせて、本展の出品作品は、モノクロームの作品を基調にしています。
日本語では、通常、モノクロームのことを白黒と表現しますが、ドイツでは英語と同様、黒白の順で表記します。ドイツ人にとって、シュヴァルツ(黒)は特別な意味を持つようで、単に黒色というだけでなく、比喩的に使われることもあります。実際、ドイツの国旗に使われている黒は、過去の抑圧や苦悩を表しているとも言われています。一方、シュヴァルツ・ヴァルトと呼ばれるドイツ南西部の黒い森は、ドイツ人にとって帰る場所、畏敬の念を抱く存在でもあるようです。
黒白、ドイツというキーワードで思い出されるヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』は、ヴェンダースがモノクロで撮影した1974年公開の映画です。小津安二郎の影響を色濃く感じさせる本作は、黒と白、あるいはグレーの世界の中、静かに物語が進みます。また、モノクロームの可能性を探求した作品群〈グレイ・ペインティング〉で知られるゲルハルト・リヒターにとって、「グレイ」は制作のテーマの一つであり「無」を象徴すると言われています。リヒター自身は、グレイをいかなるイデオロギーにも染まらない「無条件の絵画」であると語っています。
一音として完結し得る音響の複雑性、その洗練された一音を聴いた日本人の感受性が間という独自の観念をつくりあげ、その無音の沈黙の間は、実は、複雑な一音と拮抗する無数の音の犇めく間として認識されているのである。
-武満徹『武満徹著作集1』新潮社、2000年、200頁、初出は1971年。
武満が無音の沈黙の間を、無数の音の犇く(ひしめく)間、と表現したように、黒と白も相反する現象ではなく、黒という無数の粒子の中にある空の部分を白、と捉えることもできるでしょう。もしくは、リヒターのように黒と白の間に無限に広がるグラデーションとして「グレイ」を「無」の象徴として描写する作家もいます。黒と白、光と影、夜と朝。モノクロームから連想されるそれらの間、連続する階調の、そのあわいを掬い取るような作品を各作家の解釈にて提示いたします。